スタバを出ると梨沙をドライブに誘う。


「車なんだ、少しドライブする?」


「……良いんですかぁ?」


ドライブに誘われて梨沙は飛び上がるほど嬉しかった。


「良くなかったら誘わないよ」



* * * * * *



「杏梨ちゃん、何か良いことがあったのかしら?」


お客様が帰り、ネイルサロンを掃除する杏梨に琴美が聞く。


「え……?」


一瞬、何を言われたのか分からず、モップを持つ手を止めて小首をかしげる。


「だって、鼻歌」


琴美が笑う。


「あ……」


無意識に歌を口ずさんでいたようだ。


「す、すみません お仕事中に」


「いいのよ?責めているわけじゃないの すごく可愛かったから」


笑顔の琴美だが、心の中では幸せそうな杏梨が妬(ねた)ましかった。


「何があったか聞いてもいい?」


「え……っと……」


昨日、ゆきちゃんが愛しているって言ってくれたって言えないよ。