当たり前の様に車に乗り込む先生を、少し後ろから見ていた。

正直、どうして良いのか分からなかったから。


「なに突っ立てるんだ?早く乗りなさい」


そう言うと、タバコをくわえて窓を開けた。

私は助手席に乗り込むと、先生を見た。

火をつけようとした先生は、私の視線に気づいた様子で、


「……分かったよ」


そう言うと、くわえていたタバコをケースにしまった。

私は嬉しくて笑顔を作ると、先生も笑いながら私に向かって言った。


『負けたよ』


そう言ってアクセルを踏んだんだ。


「先生、ありがとう」


先生に聞こえない位の小声でお礼を言った。

その声は隣を走るオートバイの音でかき消されてしまった。


「なぁ、新庄。早めに決めとけよ」


不意に呼ばれた名前に、照れてしまう私。

「な…何を…ですか?」

少しどもってしまい、余計テンパってるし。


ダサいなぁ~~


スマートに会話が出来ないなんて、やっぱりどっか抜けてるんだろうな……なんて反省してみた。