「実は……私、気になる人が居るの」



フッと顔を上げる柚子。

篠は黙ったまま俯いていた。


「その人とは、絶対に絶対に結ばれないんだ……だから…好きだって気づかない様にしていたの。

でもね、今の篠の気持ちを聞いて分かった気がするよ。

きっと、私は逃げて居たのかもしれないね」


篠は、私の手を握り締めたまま顔をあげた。


「誰なの?」


あまりにも真っ直ぐな瞳で見るから、吸い込まれそうになるよ。

私は篠から視線を外すと、絞り出すようにして答えた。





「真咲先生」





私はどうして良いか分からなかった。


絶対に馬鹿だって思うよね。


私だって先生を好きになるなんて、漫画の世界とかでしか無いって思ってたから。


すると、ずっと黙っていた柚子が口を開いた。



「私は知ってたよ」