「新庄、お母様が倒れられた。早く荷物をまとめなさい」


一瞬にして私に視線が集まり、教室中がガヤガヤし始めた。

当の私は、何を言われたのか理解しきれず、固まったまま何をして良いかわからなかった。

そんな様子を見かねた隣の男子が

「早く詰めろよ」

と、机にかけていた鞄を机に置いてくれた。
そんな声で我にかえった私は、急いで用意をしてみはっちゃんについて行った。

みはっちゃんは私の肩を抱きながら、少し小走りで車まで向かった。

車に乗り込んだ私達。
みはっちゃんは、ものすごい勢いで病院に向かって車を発進させてくれた。


無言の車内。


あまりに急過ぎて
何も言葉が出なかった。

ただ、祈る様に両手を握りしめたまま、遠くを見ている私。

そんな私を見ながら、みはっちゃんは優しく声をかけてくれた。

「大丈夫か?」

私は前を向いたまま、少し頷いた。

みはっちゃんは、それ以降私に話し掛ける事はしなかった。