私は急いで下に降り、洗面所からバスタオルを掴み玄関まで走った。


―――ガチャ


私がドアを開けると、真咲先生がずぶ濡れのまま道路に佇んでいた。

冬になりかけた風は意外と冷たく、肌を突き刺してくる。


「ちょっと先生!!何やってんの?!早く中に入って」


私は先生を、玄関に引っ張りこんだ。

先生のシャツは完全に濡れて肌に張り付き、髪はシャワーを浴びたみたいにポタポタと滴を垂らしていた。


「何やってるのよ!!風邪ひくでしょ?」

私は持っていたバスタオルで先生の体をくるんだ。

「タオル持って来るから待ってて」

私が走り去ろうとした瞬間、


―――グイッ


私の左手が先生に捉えられていた。


「なっ……」


びっくりして振り向くと、先生は今にも泣きそうな顔をしながら


「行くなよ……」


そう言うと、私の手をギュッと引き寄せた。

先生の手は有り得ない程冷たくて、長い間外に居た事を示していた。