教室で荷物を取り、私は学校を後にした。

本当ならバイトだったけど、どうしても行く気にならなくてお休みの電話を入れた。

私は何も言わなかったけど、電話口でさゆりさんは


『何か有ったら電話して良いからね』


なんて優しい言葉をかけてくれて、我慢していた涙がどっと溢れ出した。


自分がした事が良かったのか分からない。

ただ真咲先生も一色先生も、これ以上傷ついて欲しくなかった。


一色先生の事はあんな事されて好きじゃないけど、昔一色先生が負った精神的・肉体的苦痛は痛いほど良く分かる。


私はお父さんの記憶が少ないけど、お父さんが死んでしまった時のショックは今でも鮮明に覚えている。


『死ぬ』


事の意味さえ良く分からない私が、これだけ苦しんだんだ。

一色先生の苦しみは計り知れないはずだ。


私は気が付いたら、家までたどり着いていた。

泣きながら歩く私は、さぞかし奇妙に映った事だろう。

部屋に入った私は、鞄を放り投げベットにダイブした。


止まる事を知らない涙は、徐々に私の体力を奪っていった。