「それから立ち直るのに、5年もかかったわ。やっと忘れたのに……

久々に再会した慎弥は、幸せそうに暮らしてあんたの様な彼女まで居たのよ。

その瞬間、私の中の何かが音を立てて崩れたわ」

だから、私に嫌がらせをして別れさせようとしたのね。


愛情と憎悪は紙一重なんだ。


きっと一色先生は、死ぬほど真咲先生を愛していたんだね。

それは私も真咲先生を好きだから分かる。

そして若かったが故、結ばれなかった恋。


「一色先生…真咲先生の事を、まだ好きなんだね」


私は一色先生に近づいて行くと、しゃがみ込む先生の肩を抱いた。


「もう1度、頑張りなよ」


顔を上げた一色先生は、少女の様に儚げで壊れてしまいそうだった。

私は先生の背中を少しさすりながら、一大決心をした。


きっと一色先生が負った傷は、真咲先生にしか治してあげられないんだよね。


だから……


私は立ち上がり、

「また来ます」

そう言って、保健室から走り去った。