「……」
言葉が出てこない。
だって、口を開いたら好きが出て来ちゃうんだもん。
そう、また先生を困らせちゃうから……
胸が締め付けられる感じになる。
苦しいよ、先生。
また明日からいつもの生活になんて戻れないよ。
だって、こんなに幸せな時間を知ってしまったから。
人間って欲張りだね。
1度知ってしまうと、また欲しくなる。
そして、私は知ってしまった人間……
「新庄?」
もう1度、私に呼びかける先生。
「……たく…ない」
この気持ち
もう止まらないよ……
「えっ?」
聞き返す先生に
涙を溜め先生を見上げながら
「帰りたくない」
と、はっきり伝えてしまった。

