「行くか」
そう言って先生が立ち上がり、私に手を差し伸べる。
――――ドキドキ
先生の手が触れると、心臓は一気フル稼働する。
先生の手は大きくて温かかった。
そのまま、先生の少し後をついて高台を降りた。
手は繋がれたまま……
先生そんな事したら、期待しちゃいます。
車に着かなかったら良いのに…
なんて希望は虚しく、あっという間に車まで着いちゃった。
当然、手を繋いだまま車に乗れるハズもなく、パッと離れてしまう手。
さっきまでの温もりが嘘のように、私の右手が空気を掴んでいた。
急に寂しくなった右手は、
ポケットの中の携帯ストラップを
ギュッと握りしめていた。
車が走り始めたら、今日が終わってしまうんだ。
そして、この日が幻になっていく……
楽しい時は、急に現れて
ものすごい速さで去っていくんだ。

