「先生、待ち合わせの時間が……」


本当はここに居たいのに、こんな言葉が出てしまう。


「まぁ、話を聞きなさい」


真咲先生は私の言葉を制した。


「…はい」


私は、フロントガラスの向こう側を見たまま先生の話に耳を傾けた。


「滝沢とは話して有る。
だから時間の事は気にするな。

そもそも、俺の方が先約だから行かせないけどね。」


そんな事を、サラッと言った先生を思わず見てしまう。

先生は私の方を見てニヤッと笑っていた。



先生のバカッ!!!



見る見る真っ赤になる私を見ながら、クスクス笑い出すんだもん。


「それより、どういう事?」


私は話を戻した。


柚子と話してるって言ってたよね?


先生は私を見ながら、ゆっくりと話し始めたんだ。


柚子と先生のやり取りを一通り聞いた。


柚子が先生ん家に殺気立ちながら来た事
先生に怒鳴りながら抗議してくれた事
私の事をものすごく心配してくれている事
今日の計画を先生に約束させた事
私にバイトを休ませる様にした事



それは私の知らない所で行われていた事で


泣きそうになる位嬉しい事。



でも、先生に気持ちはどうなんだろう……



話は先生の気持ちが、1つも出てこなかったからだ。


実は迷惑だったんじゃないのかな?


なんて考えてしまうよ。