付き合って1年になる私の恋人、浩二は、毎晩のように電話を掛けてくれていた。 そして今夜も。 だから私は、いつも通りに通話ボタンを押しただけ。 それなのに――… 浩二が開口一番私に向けて放った言葉は、そんな風なとても現実味を帯びない言葉だった。 「どうしたの? 突然、何言ってるのよ?」 私は悪い冗談は止めてよ、とばかりに思わず吹き出してみせた。 けれど 《好きな人が出来たんだ――。ごめん》 浩二の言葉には、少しも躊躇いがなかった。 .