電話の向こう側、涼子の部屋に流れていた音楽が、彼女の手によって消された。


 そうして臨戦体制に入ったらしき涼子は

《えー、何? まさか美咲まで試合放棄した
 って言うんじゃないわよね?》

呆れたように私に詰め寄った。


「――…」


私には返す言葉など、浮かばなかった。



《何でよ……?》


 浩二と私……、


「何で、かな……?」


 “残念でした”と言わんとばかりに、サイドテーブルに置かれたアイスティーに浮かぶ氷が、“カラン”と音を立ててグラスの中で崩れた。





.