「優奈、顔がニヤけてるよ。」

愛美にそう指摘され、はっと顔を隠すあたし。

あたしの視線の先には男子生徒とふざけあう先生の姿。


「あー、和希ちゃんね。

ホント優奈も毎日あきないねー。」


「だってカッコいいじゃん……」


先生を好きになってもう早2週間。

先生は生徒のほとんどに〝和希ちゃん〟というあだ名で親しまれている。

もちろん女子には人気があるけど、男子にも人気がある。

うちの学校の人気の先生をランキングで表しても和希ちゃんがダントツ。

(校内新聞のアンケートでね!もちろんあたしも和希ちゃんに入れました!)



でも、先生との接点は恐ろしいほどなく、毎日憂鬱なスクールライフを送る日々。

(……目があったのもあの時の1回きりだったしな。)

何か先生と接点ができるような出来事を願うあたしなんだけど、そんな気配も一向にない。

それどころか、和希ちゃんに本気で手を出す生徒も増えてきて…

ギャル系女子は先生の前でだけ制服のボタンを多く開ける子もいるらしいし。

(もちろんあたしはそんなことできっこないけど!……スタイル的な問題で。)


あれこれ考えていると頭が痛くなってきた。

知恵熱ってヤツかな?


「でさー、……優奈、聞いてる?」

「あ、ゴメン。何?もう1回言っ――」

ズルッ、

愛美と階段を上りながら教室を向かっていたあたしは、

階段で足を滑らせた。


「危ねぇっ!」


落ちる!その時に聞こえた声、

この声は…愛美じゃない。それじゃあ…誰?

あたしは意識を失くしつつもそんなことを考えていた。