「こんにちは!」



お店の奥の方から


ひとりの男性が歩きながら


声をかけてきた。


陶器のような質感の


白い肌に彫の深い目元。


少しウエーブのある黒髪と


ブラックダイヤのような瞳。


そう、まるで


森の中を迷ってしまった子鹿


みたいな印象だった。




「こんにちは」


子鹿に向かって


社交辞令の作り笑いをして


視線を美姫に移すと・・・


美姫は目の前に置かれた


大きなダイアモンドでも


見ているかのように


うっとりとした視線で


子鹿を見つめていた。



「恋しています。」


美姫の瞳はそうに語っていた。




「愛子さんですよね。


お会いできて嬉しいです。」


はにかんだような微笑を


浮かべながら、子鹿いやいや


シオンは言った。