目で追う。



あたしの授業を持たない先生があたしの事を知るはずもなく。
あたしも、迷惑そうな先生に付きまとう頭の軽そうな女にはなりたくなく。



ただそうやって、

淡い気持ちを抱いたまま時は過ぎて行った。




それが終わりを告げたのは、3年の夏。

偶々職員室に用があって、

偶々先生とドアですれ違った。


少し高鳴る胸を隠しながら横を通り過ぎた。

否、過ぎようとした。


それが出来なかったのは誰かに腕を捕まれたから。


視線を辿れば、

目を見開いた先生。


言葉もなく、見つめ合う。


時が止まったみたいに。


ヤケに、セミの声が耳についた。




それはホンの数秒のことだったのか、それとも長い間のことだったのか。

あたしには分からない。


「てるちゃーんっ!!」


先生を呼ぶ声に弾かれたようにあたしの腕を離すと小さく

ごめん

と呟いて去っていった。