正直、助かった。秋吉さん、知らない内にビール注ぐからあれを飲んだら私終わってたな。秋吉さんに見えない位置で一条さんに、ありがとうを込めてイッとすると、一条さんが軽くウインクした。
うーん、スマートな人だ。


とにかく酔った。体が熱い。上着を脱いでフーと息をつく。
トイレにでも行こう。
少しリフレッシュしたくて立ち上がった。
一条さんが手を貸してくれる。


が、それを割り込む様に乱暴に私の手を掴んだのは、

「…来い。」

いつの間にか傍にいる無表情な美少年。
その口調が苛だっていて眉を寄せる。どうした美少年。
周りも席なんて関係なく盛り上がってるから四宮君が少し移動した位で別に誰も気にしてないみたいだけど。



四宮君はまるで気にせず私の手を引いて個室から出た。



「…どうしたの?」


私の質問に四宮君は店の角の死角のスペースで足を止めた。


「服…着ろ。」


四宮君は不機嫌に言う。

まさかそれだけ?私の怪訝な顔に、「あんまり飲むな」とまた一言呟く。


心配してくれたのかな?


さっきまで無表情だった四宮君は苛立ちを隠さない。


私は四宮君の頬をつねった。


「苛々しすぎ」


私の言葉に四宮君が僅かに長い睫毛を伏せる。
なんだか、この子はいつも苛々してるよね。こないだみたいに、笑えば良いのに。

今度は両手でムニッと引っ張ってみる。気持ちいい。

「…誰のせいだと」

「やわらかー、すべすべ〜」

「……ハァ」


溜息をつく四宮君。それから、なんだか諦めた様な表情で私を見つめている。なんだなんだ。
とりあえず変顔をしてみた。笑った顔が見たいな、とか思ったわけで。