歯無は立ち上がった。そうしないと見えないのだ。

 トイレの前で二人の男が声を上げている。

 ケンカだ。

 だが、ここにいる人たちは誰も見向きもしない。固まったかのようだ。

 罵声はやまず、二人の男は胸倉をつかみ、今にも殴り合いが始まりそうだった。

 歯無はじっとケンカの状況を見守っていた。そろそろロボットが登場する。

 やはり、五体のロボットがやって来た。

 前に見た通り、ロボットは二人の男を取り囲んだ。

 すると、今まで、黙って座っていたおじさんたちが急に立ち上がり、ロボットの方に走り出して行った。