慣れとは怖いものだ。『レベル2』に来たときは幸福に感じていたが、衛生面も食事も安定すると、次の不満が出るのだ。人間の欲求は底なし沼のように、満足することがない。

 だから、『レベル2』にいる人間が『レベル3』は更なる期待をするのだ。

 でも、『レベル3』でも必ず、欲求が満たされなくなるはずだ。

 その時はどうするのだ。

 逃げるのか?

 それとも我慢をするのか?

 そう考えると、やはり語野字の言う天国ではない。

 歯無は暇なので、色々と考えてしまうのだ。

 静かだった食堂だが、罵声が響いた。

 何を言っているか聞きとれないが、緊迫感があるので、ケンカが始まったに違いない。