「チカ、ね」


そう笑って、彼、


こと小野正史は、立ち上がった。


少しも私に触れず、ただ歩いていく風はその感触がした。



その後やけに立派なご飯を食べさせてくれた。


しかも食卓で。




「おいしい?」


とか、何とか聞きながら、


彼も同じものを食べていた。





それに返事することもできないほどに、


私はその料理を一目散に食べた。



昨日までと、胃の満ち方すら違う気がした。


温かくて、お腹の上の方までつまっている感じ。


料理の上手いこんな人に捕まって、今夜はすごいラッキー。





ふらふらも少しおさまった。

今ならセックスも大丈夫。




今か今かとベットに連れられる時を待ったけど、

結局その日最後まで

彼は一切私に触れなかった。




料理は立派だし

同じ物を食べて、まるでふるまっているかのようで


しかも一緒に食卓について、私を人間扱いしているようで


その上セックスもしない。



経験したことのないことが多過ぎて、


正直私は戸惑っている。


一体、何がしたいんだ。





この日から、


私の「チカ」としての生活が始まる。






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