最後の80円を、使う時が来た。
私はあれからさらにやせた。
もう棒っきれみたいな体だよ。
歩くだけでたまにふらつく。
一駅分歩く体力はないと推測した。
切符は80円で、
ついに私は文字通りの
一文無しになった。
次の駅で常連さんができたら、私はもう終わりかな。
今はあがいているけれど、どうせ無理だ。
それなら、少しずつ枯れていけばいい。
その時が訪れるまでに死の恐怖を捨てていって、
静かに消えられればいい。
階段を上ってみると、大勢の人間に囲まれた。
全員が忙しそうで、次から次へと流れていった。
流れていく。
あの人も、この人も。
そうやって、みんな流れていくんだ。
だけど、みんな死なない。
死ぬのは、私だけ…。
流れる人たちの中に、
ひとつ、
流れていかない顔が見えた。
またあの男に会った。
ただ背が高いだけで目を引くような顔ではないが、
なぜか私は見つけてしまう。
このオフィス街のどれかの会社に勤めているのか。
これで、3度目だね。
今日でお別れ。
この電車に乗れば、もう二度と偶然会うこともないだろう。

