「ごっご存知、でしたか…」

「まあボクだから分かったこと、と言いましょうか。文章に表れるクセや、物語のシチュエーションが、あなたの作る小説と似ている部分が出ていましたから」

「うげっ…」

先輩には何作か、私の書いた小説を読んでもらったことがある。

でもそれはファンタジーやSFと、ジャンルは違ったけれど、文章のクセや似ている部分は消せない。

「今、スゴイ人気じゃないですか。文庫化のお話も出ているんじゃないんですか?」

「はあ…。実はそこが問題でして」

私は先輩に、今までの経緯を話した。

軽い気持ちで書き始めた恋愛小説に、スゴイ評判が集まっていること。

それは自分の身近にまで、迫っていること。

文庫化の話は来ているけれど、恋愛経験の無い私の話を本にするのを、躊躇っていることなど。