はぁ、と何度目かも分からないため息を付く。

こんなに気になることになるなら、ちゃんと言って来るんだったよぅー・・・なんて今更後悔しても遅いけど。

瑞樹先輩に会うのにこんなに気持ちが晴れないなんて、まさかすぎて笑えもしない。

クルクルになった髪の毛の先を指先で遊びながら、あたしは朝を思い返した。



とは言っても大したことじゃないんだけどね。



朝、拓巳に会ってこなかった。それだけ。

いや、拓巳ちゃんと知ってるんだよ?今日あたしと瑞樹先輩がデートだって。

けどね、ちゃんと言いたかったっていうか。

拓巳に「行ってこい」って言って欲しかったっていうか。

わざわざ昨日寝る前に「今日瑞樹先輩に会うんだから服装のチェックしなさいよ」って言い訳まで考えたっていうのに。

・・・いや、半分ホントだけど。

あたし男受けする服は分かっても、瑞樹先輩好みの服は分からないし。



「はぁー・・・」



とりあえず、インナーがアーガイルのアンサンブルに、シンプルなショートパンツ、それに秋から履けるブーツを合わせた。

髪の毛はカジュアルにもフェミニンにも見えるよう、高めのハーフアップに可愛いリボンの髪飾り。

アクセサリーは小ぶりのネックレスと、揺れるイヤリング。

(あ、ちなみに顔の周りで小物が揺れると色気が出るって本当にある裏技なのよ、知ってる?)

そんなことを考えていたときだった。



「ねぇねぇ、一人?」

「え?」



声を掛けられて、反射的に顔を上げた。

そこにいたのは知らない男の人───下卑た笑みを浮かべる2人組。

頭の悪そうな格好と雰囲気に、嫌悪感しか湧き出てこない。



「いえ、待ち合わせです」



こういうのは戸惑った方が負けよ。

わざとらしいまでに背筋を伸ばして凛と答えると、「冷たいなぁ」と1人に肩をつかまれた。

触らないでよ。あんたのための服装じゃないのに。

そうは思っても、無理矢理この手を引き剥がすことは出来ない。

“人目”。それはあたしにとって最も怖い物だから。