ったく、試合に勝ったっつーのに怒らせてどうするよ、俺。(そしてやっぱり面倒くさい)



「俺が悪かったって、話し聞くから。な?」

「いいよ、もう!拓巳に相談しようとしてたあたしが間違ってた!」

「じゃぁ俺が勝手に話すから聞きたかったら聞いてろよ?」

「───・・・」



俺の言葉に妃那は黙った。

沈黙は肯定の証、とよく言ったものだけど、妃那はまさにそれ。

素直じゃない妃那の足が心持ち遅くなったのに薄く笑いながら、俺は続けて口を開いた。



「驚いたのと・・・あとは緊張とか不安とかじゃねぇの?妃那」

「───・・・」

「今までお前は思ったとおりに男を落としてきただろ?

でも瑞樹先輩は違かった。お前がどんなに色仕掛けしても中々靡(なび)かなかった」



妃那の長い髪が目の前で揺れる。

巻かれていない髪はサラサラと揺れて、何度も染めているにも関わらず痛み知らずなその艶は手が行き届いてる証拠だろう。

ちなみに以前にも巻いていないときがあって、理由を問いただしたら

『ただでさえ紫外線に当たるんだからそれ以上痛めてどうするの!』

と怒られたことがある。



「だから、突然妃那の方に振り向かれて驚いた。

本命だからこそ、今まで思い通りに行かなかったからこそ、デートに緊張する。

もしかしたら、瑞樹先輩も今までの男と一緒かもしれないって不安になる」



文章を音読するように淡々と話していると、突然妃那がピタリと立ち止まった。

「妃那?」と名前を呼ぶと、震える声で何か呟いたが・・・聞こえない。



「どうして・・・」

「え?」

「どうしてそうやって人の図星付きまくるのよぅぅぅぅ〜〜〜っ!!!

人をこれ以上不安にさせて楽しい!?ねぇ、楽しい!!?」

「お、おい妃那!」