「あのなぁ、妃那」



いまだお腹を両腕で抱えて横たわる妃那の顔の近くにしゃがみ込んで口を開く。



「女と男は根本的に筋肉量っつーか体のつくりが違ぇし、

妃那が普段やってるメニューは美容のためだが、俺たちは体力・筋力のため。

目的が違ければ腹筋の中でも鍛えられる腹筋は違ぇし、

いくらお前が普段からやってるからって突然同じメニューこなせるはずもねぇの」



分かったか?

恨めしげに俺を見る顔の頬を摘んでやると、妃那は視線を逸らして「分かったわよ」と小さな声で呟いた。

そんな横顔についつい笑ってしまう。

こんな単純で、負けず嫌いで、バカ正直な女見たことねぇ。



「ちょっと、何笑ってんのよ!!」



そんな俺を目ざとく妃那は見つけて怒鳴った。

その姿すら笑ってしまう俺。(もちろん殴られることになる)



「・・・で?お前何突然そんなやる気になってんだよ」



痛みも引いたのか、腰に引いていたクッションを両手で抱えながら妃那はフローリングに転がっている。

俺はベッドに腰掛けて膝に頬杖を付きながらそんな妃那を見つめた。



「言ったじゃん、瑞樹先輩のためにもっとキレイになりたいの!」



妃那はと言えば、力説しながら俺に視線を送る。

綺麗に、ねぇ。



「今のままじゃ駄目なわけ?」

「うーん・・・十分自信はあるんだけどさ、向上心は必要じゃん?」

「そういうもんかね?」

「拓巳にはわかんないよ」



ケラケラと馬鹿にしたように笑う妃那にむっと口をとがらせる。

(確かにわかんねぇけど!)