本当に忘れていたらしく、きょとんとした様子の拓巳にため息1つ。

なんであたしこんなバカの言うこと聞いて、早起きして、こんな寒い思いしてたんだろう。

肩を落としたあたしに「妃那?」と首を傾げる拓巳。

あたしは「ん」と持っていたミニバックを差し出した。



「え?」

「お弁当!昨日散々あたしに注文したの忘れたの?」

「あー・・・あー、そっか」

「何よ、忘れてたとか言ったらぶっ飛ばすわよ」



ジロリと睨んで右手で拳を作ったら、拓巳は「違ぇよ!!」と慌てて手を振った。



「ほら、お前に弁当作ってもらうの中学以来じゃん?

中学の頃は学校内でもらえてたけど───そっか、高校そういうわけに行かねぇんだなぁって思って」



要するに、わざわざ待ち合わせしないと受け取れないということをすっかり失念していたらしい。

本当にバカなんだから。とため息をつきながらも笑ってしまう。

見た目は大人びていて、いつもどっか落ち着いてるし、少し先を行ってしまってるようでそれでいてやっぱりどこか考えが足りない。

そんな幼馴染は「サンキューな」と満面の笑みを浮かべると、あたしのミニバックを顔の横に持ち上げた。

(そんな屈託ない笑顔はまったく変わってない。それこそ、幼稚園の頃から)



「よし、それじゃぁ行こっか」

「は?」

「学校!拓巳、朝練遅刻しちゃうよ?」



反動を付けるように体を壁から離して持ち上げる。

拓巳は目を丸くして「お前も行くの?」なんて言うから「バーカ」と舌を出した。



「あたしの格好くらいちゃんと見なさいよ。

髪の毛、メイク、制服、鞄、カンペキでしょ?」



アンタに会うためだけにカンペキにするわけないじゃない。