「あの!!・・・ま、またお話してくれますか・・・っ!?」



泣きそうな声だったかもしれない。

震えていたかもしれない。

顔なんて真っ赤かもしれない。

あたしから男の人にお願い事したのなんて初めてで、

その緊張と恥ずかしさと返答の不安にいっぱいいっぱいで。

胸の前で両手をぎゅっと握りながら、

それでも目を見開いて驚いている天沢先輩をじっと見つめて返事を待った。



「───喜んで」



少し間を置いた後、天沢先輩はにっこりと笑った。

それから「バイバイ、妃那ちゃん。夏乃ちゃん」と手を振ったのを最後に、屋上の扉から姿が消える。

ガチャン

と重々しい金属音とともに、あたしはへなへなとその場に座り込んだ。



「ヤバイ・・・死ぬかと思った・・・っ」



目を瞑れば、天沢先輩の顔も、指先も、声も、全てが頭の中に響く。

心臓はまだ早鐘で、息をするのも苦しいくらい。



「でも、すっごい嬉しかった・・・」



震える両手で口を押さえながら笑う。

そんなあたしを見て、夏乃も、海斗君も、拓巳も、「しょうがないなぁ」と言ったように笑った。





(「っていうか、妃那ほんとにマジモードじゃん」)
(「妃那に恋愛できる日が来るとはねー」)
(「面倒くせぇことになりそうだけどな」)
(「3人とももっと応援的なコメントないの!?」)
(「「「ない」」」)