海斗の返事に、思い当たること何もねぇけどな、と首を捻る。
大体、何か喧嘩じみたことをしても萩は次の日にはケロリと忘れているタイプだというのに。
「ま、気にする必要ないんじゃないの?相手はたかが萩で妃那じゃないんだし」
「だから、何でそこに妃那が出てくんだよ」
「だから、なんとなくだって」
「・・・」
「・・・」
「・・・ホント、お前って意味わかんねぇ」
にこにこと読めない笑顔を崩すことない海斗に肩をすくめる。
「っていうか、萩はいつものこととして天沢(あまさわ)先輩が遅刻するのは珍しいよな」
「確かに」
海斗の視線を追いかけて、さっきの位置に目を戻す。
萩同様「遅くなりました!」と謝罪している彼。
天沢瑞樹(あまさわ みずき)先輩、2学年だけれどチームのキャプテンを勤める実力者だ。
アイドルと読んでも違和感ない顔立ちと、抜群の運動神経、人当たりのいい性格で学校の中でも有名人だが、妃那が通う女子校でもダントツ人気らしい。
まぁ分かるような気がするけど。
タオルがないらしく(それもまた珍しい)、他の先輩からそれを借りている天沢先輩の後姿をぼーっと眺める。
容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群。うーん非の打ち所がない、そりゃモテるな。
男版妃那、みたいな。
・・・いやいや、天沢先輩はあんな性格悪くねぇか。(すみません、天沢先輩!)
ちなみに、二番人気と言われてるのがさっき俺に声を掛けてくれた三上先輩だ。
ルックスは瑞樹先輩と同等、もしくはそれ以上だけど女癖がとにかく悪いとの噂。
───それでいて、“忘れられない女がいる”という噂もある。
どっちか、と賭けをしている萩たちの姿を見たこともあるが、結局分からず仕舞いだ。