───『考えてみろよ。最初のデート以来2人が遊びに行ったの見たことあるか?』

───『・・・』

───『飯だって結局いつものメンバーで食ってたし。2人が付き合ってるらしい行動を見た記憶がねぇんだ』



そうだ、俺はどうして気が付かなかった?

妃那の性格を考えれば、すぐに気付けたはずじゃないのか?

本当に付き合ってたならば、今度は俺たちを「邪魔だ」とののしり、朝から晩までウザイまでにノロケ話をし、そして毎日のようにデートをしていたに違いない。



───『・・・だとしたら、どうして妃那は私達に嘘ついたの・・・?』



夏乃が呆然と呟いた。

確かにそれは言えている。

けれど、それだって妃那の考えなんてすぐに分かるんだ。



───『どうせ、応援して貰ってたのに付き合ってないって言ったら申し訳ないーとか考えてたんだろ』



妃那はあれだけ図々しい性格をしてるくせに、変なところで馬鹿な気を回す。

それで自分の首を絞める・・・そんな奴なんだ。

俺の答えを聞いた夏乃は面食らったように瞳を瞬かせて、それから『そうね、妃那は馬鹿だったものね』とほっと息をついて笑った。

“親友”の夏乃だから、妃那に嘘をつかれたのはショックだったに違いない。

それが安堵に変わったと分かる表情に、俺も安心した。



───『でもさ、だとしたら妃那は瑞樹先輩の告白を断ったってことだよね?』



ずっと考え込む素振りをしていた海斗が唐突に口を開いた。

それは・・・そうだけど。

はっきりとしない口調で肯定する俺に、彼は『なんで?』と丸い目を俺に向ける。

さすがにそこまでは分からない。

というより、それは俺の疑問でもあったから。

思わず無言になっていると、『それにさ』と夏乃は言葉を続けた。



───『拓巳君、妃那には瑞樹先輩がいると思って突き放したわけよね?』

───『!!』

───『・・・でも実際妃那の隣に瑞樹先輩はいない。私や海斗にも嘘をついているから本音を言えない。そこで貴方にまで突き放された妃那は・・・』





『今、どんな気持ちでいるのかしら?』