「妃那、ブサイク」

「だぁってぇー・・・」



拓巳の部屋で大泣き&爆睡してしまってから2日。

文化祭もとうとう明後日に迫ってきた。

周りが活気付くと同時に慌しさも加わり始めた今日、あたしは机に頬をつけたまま全身の力が抜けていた。

(ちなみにあたしのクラスは迷路。机は受付用)

本当にまったくもってエンジンが掛からない。こんなのいつぶり?

あぁ、きっと頬がびよーんって上に持ち上がってんだろうなーリフトアップになるかなー。

そんな現実逃避に染まっていると、横に座っていた夏乃が頬杖付きながら呆れたように口を開いた。



「───・・・拓巳君にかまって貰えないの、そんなにショック?」

「別にそんなんじゃないもーん」

「説得力ない」



小さく息を付いてデコピンを食らう。

「いーたーいー」と答えるけど、そんな声にすら力が入ってない。

自覚してるよ。めっちゃ自覚してますとも。

だからそんなあからさまに冷めた目であたしを見ないで夏乃さーん。



「アンタ、本当に何したのよ」

「分かったら苦労しないよぅ・・・」



ほんの少し体を動かして、机に今度はあごを乗せる。

うわー、皆大変そうだなー。なんて他人事のように頭の片隅で考えた。



あの日の後、目が覚めたあたしに対して拓巳は「おはよう」と一言。

それは至って普通だと思ったんだけど、今考えればあたしが寝ぼけてそう感じただけでもう違和感は始まっていたのかもしれない。

それから朝食では一言も口利いてくれないし、

学校も一緒に行ってくれなかった。

学校ではもちろん会うことなんてないし、帰りはばらばら。

メールも電話も応答なし。

たった一日で腹が立ったあたしは、

今日ありえないほど早起きして「なんなのよ、その態度!」っていつもみたいに怒ったんだけど、

拓巳は見たこともないような冷めた目をして、

何も言葉を出すことなく、あたしを一瞥して学校に行ってしまった。

あたしはと言えばその視線に体が竦んでしまって、何も言えなくて。

ただ1つ分かったのは



───拓巳に嫌われた



それだけ。