俺は妃那から手を離し、ぎゅっと握り締めた。

俺は何を言っている?

こうなることは分かっていたじゃないか。

妃那を応援していたじゃないか。

2人が付き合ったことを、喜んだじゃないか。

なのに、どうして



「妃那・・・ッ!!」



こんなにも胸が痛くなるんだろう。



いつも隣にいるのが当たり前だった。

自由奔放で計算高くて、わがままでうるさくて、迷惑ばかりかけて、

そんな妃那を疎ましいと思っていた。



───嘘だよ。



そんなの、嘘だ。



「・・・妃那ッ・・・!!」



隣にいるのは当たり前のことなんかじゃなくて、

君の笑顔を見るのは自然なことじゃなかった。

自由奔放でも天真爛漫な妃那を見ると元気を貰って、

計算高い妃那に困らせられるのも案外楽しかった。

我侭でもうるさくても、そんな妃那に付き合いきれるのは俺だけだと思っていたし、

迷惑掛けられたことだっていい思い出だ。



そんなことにも気付けなかった俺は、妃那に嫌われても仕方ないのかもしれない。



「妃、那・・・っ!!」



最初に妃那を手放したのは俺だった。

それなのに、こんな子どもじみた駄々をこねる自分が浅はかで仕方がない。

縋(すが)るように妃那の名前を呼びながら、

それでも自嘲して笑った。



「・・・たくみ・・・?」