・・・いいよね?

だって、あたしは瑞樹先輩が大好きで、

瑞樹先輩もあたしを好きだと言ってくれて、

みんなはあたしを応援してくれてて、

何処に問題があるというのだろう。

元々、断ったこと自体が問題だったんじゃないかな。



───言ってしまおう。言って、楽になってしまおう。



「瑞樹先輩、あたし・・・「瑞樹?」



そう思って切り出したあたしの言葉だったけど、それは敵わなかった。

あたし以外の女性の声が、瑞樹先輩を呼んだからだった。



「あれ?麻里、どうした?」

「瑞樹に会いに来たのよ。どうして教室に居てくれないの?」

「ごめんごめん、倉庫にダンボールを取りに行っていたんだ」



瑞樹先輩が“麻里”と呼んだ人は、ボブカットが特徴的なモデルのように長身で、あたしと同じ制服に身を包んだ女性だった。

個性的なカジュアル的な雰囲気を持った彼女は、あたしとは違うタイプだと直感で思う。

2人は親しそうに会話をしていたけれど、

ふと麻里さんの視線があたしに移った。

特別大きくもない猫目は上下ともしっかりマスカラに縁取られ、強気な目線に瑞樹先輩と違う意味で心臓が跳ね上がる。



「瑞樹、誰?」

「あぁ、俺の可愛い後輩の幼馴染だよ。

ちょっとした知り合いでね、会ったとき手伝うって言ってくれたんだ」



あたしの説明を促すために瑞樹先輩に戻った視線が、「ふーん」という言葉と同時にまたあたしを捕らえる。

悪印象・・・というより、敵意を持たれた、と女の直感が知らせる。

目の形とか視線の送り方とかそういう問題ではなくて、

黒目の奥に確かに灯った炎を肌で感じた。



「ありがとう」

「いえ・・・」