「うん、申し訳ないんだけど、妃那にはちょっと荷が重いわ」
夏乃があたしを庇う方向に変わったらしい。
あたしはその言葉にぶんぶん首を縦に振りつつ、あとで夏乃には学食でも奢ってあげようと誓った。
持つべきものはバカな幼馴染より、意地悪な男友達より、頼りになる大親友。
「涙は演技出来ても震えは作れないもんねぇ」
「いや、妃那なら出来る」
「妃那に出来ないことはない」
「ちょっとっ!!!」
頬に手を当てながら呟いた夏乃の言葉に、海斗君と拓巳がさらりと傷つくことを言う。
「どういう意味よ!」と「周りに聞こえたらどうするのよ!」という意味を含めてあたしは3人に突っ込んだ。
「───あれ?妃那ちゃん?」
びくっ、と体が固まった。ほとんど反射だった。
その声は、昨日嫌と言うほど聞いていて、そして“昨日までは”、聞きたくて仕方ない声だった。
拓巳も、夏乃も、海斗君も、周りのみんなも、自然に顔を上げたから、
あたしも顔を上げないわけには行かなくて。
「瑞樹、先輩・・・」
「何やってるの?こんなとこで」
積み重ねたダンボールを両手で抱えながら、きょとんとした顔から一転整った笑みで近付いてくる瑞樹先輩。
あたしは、ハッと我に返ってすぐさま態度を変えた。
「瑞樹先輩、助けてください〜っ!!みんながあたしのことお化け屋敷に連れ込もうとするんですよー」
瑞樹先輩に泣き顔で駆け寄って、先輩の後ろに入り込む。
あたしを見てびっくりしてた瑞樹先輩は、すぐに笑って前を向いた。
「あんまり、いじめんなよ?」
夏乃が「私助けたのに」とブツブツ呟いて、
海斗君はニヤニヤと「良かったね、妃那」なんて口パク、
拓巳は───無表情であたしたちを見つめていた。
あたしはこのままここにいたらボロが出る気がして、慌てて瑞樹先輩に話しかける。

