「妃那、大丈夫だって。冗談」



そんな笑えない冗談はいりません。

半分涙目になりながら、あたしは目の前のにっくき幼馴染を睨みつけたのだった。



この状況を説明するには、何処まで話を遡ればいいんだろう。

えーっと・・・とりあえず、今日からの一週間は文化祭準備期間、ってことを説明すればいいのかな?

拓巳の通う学校と、あたしの通う学校は、屋上で話をすることが出来るぐらいの近さで隣接してる。

そのせいもあってか例年文化祭は合同で、だからその大規模さ故に準備期間はとても長いのだ。

もちろん、いくらサッカー部とは言え朝練はない。

あたしと拓巳は一緒に登校するのは、自然な流れだった。

たとえ、昨日のことがあっても。



───『おはよう』



朝、家を出たら、ぴったり同じタイミングで隣の家のドアが開き、見慣れた頭が見えた。

今日は瑞樹先輩とのデートの翌日、

気まずいのは分かっていたけれどそんな空気が嫌で思わず話しかけると、

拓巳は驚いたように振り返ってほっとしたように柔らかく笑った。



───『・・・おはよ』



あぁ、拓巳も同じ気持ちだったんだなぁって思った。

距離が出来てしまったような、ほんの少し壁が出来てしまったような、そんな不安。

気持ちが同じだったことが嬉しくて、

返事をしてくれたことに安心して、

あたしは自分で思っているよりも浮かれていたのかもしれなかった。

拓巳の一言一句に必要以上に反応していたあたしは、勢いで言ってしまったのだ。



───『どこにでも行ってやるわよ!』



と。

(どんな話の流れだったっけ、この話題・・・)

というわけで、拓巳に連れてこられたのは、まさかの。