約束は6月7日だった。 まだ早いけれど海に行かないかという呼びかけ。 彼女は早々にそれを応じると、俺のメールに愛想よく返事をした。 初めて来る、海沿いの田舎駅に彼女と降り立つと、もう周りなんて見えたもんじゃなかった。 初めてのデートは海となった俺。 どうしようもなく愛しいわけじゃあない。 ただ理由は他にあるのだ。 彼女は照れくさそうに俺の右手を握ると、半ば引っ張るようにして田舎町に見合った石段を降りていった。