飛びまくった汁を丁寧にふいて、その上に今朝天日干しした布団を敷く。
「はい、どうぞ」
仕上げに枕をおいて、それをポン、と叩いてやった。
お日様に当てたからふわふわで、アリィにはもったいないくらいだ。
それなのに。
「えー、アリィゆっぴーと一緒にベッドで寝たい」
なんでコイツは何でもかんでも私と一緒にしたがるのか。
「せっかく敷いたんだから、ここに寝て」
というのは建前で、アンタみたいな人間となんて一緒のベッドに入りたくない、というのが言わずもがなの本音だ。
絶対に寝相が悪いに決まっている。
アリィは渋々布団の上に乗っかった。
「よし、じゃあ電気消すよ」
すると、眉間にしわを寄せていたアリィがますます不服そうに、今度は唇をとがらせた。
「やだよ、まだ寝たくない。ゆっぴーとおしゃべりしたい」
そう言うと思っていた。
でも、父が帰ってくる前に寝静まっておきたい。
じゃないと、いろいろ面倒なのだ。
いつもと同じを装うために、アリィの靴だって靴箱の奥に隠してある。
今日も明日も、この家にいるのは私だけ、ひねくれた娘ただひとりだけ。
そういうことにしておきたい。
「ウチは九時消灯って決まってるの」
「ゆっぴーのパパとママは?」
アリィに家族のことは話していない……面倒だから。
「仕事で遅いから。いいから寝るの」
「そんなぁ、会ってみたいよぉ」
駄々をこねるアリィを無視して、電気を消す。
明日のことは考えないことにして、目を閉じた。


