窓を全開にして、換気扇を回し、できるだけ息を止めて、体を洗う。
こんなにおいをかいで、よく鼻が曲がらないものだ。
低い鼻は嗅覚が鈍い、なんてことはないだろうに。
においはなかなか消えない。
においの元が残っているせいかもしれないと思い、床を軽く磨いてみる。
吐き気がしてきた。
ちくしょう、あの女はどこまで私に苦労をかける気か。
うらめしい気持ちを膨らませながら部屋へ戻ると、お腹が減ったと泣きつかれた。
「ゆっぴー遅いよ、早くご飯ちょうだーい」
気持ち悪いから触るな、誰のせいで遅くなったと思っているんだ。
しかし、こんなに近づいてもアリィからあの華美なにおいはしない。
もう、訳が分からない。
考えても疲れるだけだと、おとなしく冷蔵庫から冷やし中華を取ってきて、テーブルに並べた。
箸は、もちろん割り箸。
もてなす気持ちなんて皆無だ。
「いただきまーす!」
それでも、アリィは嬉しそうに麺をすすり出した……汁をあちこちに飛ばしながら。
麺をうまくすすれないなんて、やはりこいつは日本人ではない、と改めて確信した。


