そろそろあがって来るだろうと、着替えを用意して早小一時間。
あの女、なかなか出て来ない。
シャワーだけなのに、どうしてこんなに時間がかかるんだ。
イライラして様子を見に行こうとした、その途中で湯上りのアリィとはち合わせた。
「な、長かったね……」
「そう?アリィいつもこんな感じだけど」
そこで、違和感に気づく。
髪の毛が、濡れていない。
「あ、ドライヤー借りたから。濡れたまんまにしておくと、髪が傷んじゃうから」
そういうのは借りる前に言うもんだろう。
そうだ、礼儀知らずで空気も読めない、それがアリィという人間。
昼間はこんな奴をよく部屋にひとりにできたものだ。
私は監視の目を光らせるため、全速力でシャワーを浴びることにした。
急がないと、急がないと。
性急に風呂場のドアを開けて、私はひっくり返りそうになった。
ドジを踏んだんじゃない。
風呂場中に、謎の華美なにおいが充満していたからだ。
こんなにどぎつい香料の入ったシャンプーや石鹸は我が家にない。
アリィだ。


