大きく深呼吸して、冷やし中華を二つ買って、帰ってきた。
「おかえりー」
アリィは、なんとも締まりのない顔で私を出迎えてくれた。
とりあえずはちゃんと宿題という名の書写をしていたらしい。
これで遊んでいたら、家から蹴り出していたところだ。
「ねえ、ゆっぴー、ただいまは?」
「え」
一瞬、なんのことか分からなかった。
そうだ、帰宅したとき家に誰かいるということがないから、忘れていた。
帰ってきたときの、あいさつ。
「た、ただいま……」
するとアリィは、えへへ、と笑ってまた書写に取り組み始めた。
私が留守の間にどんな心境の変化があったのか、どうやら心を入れ替えたようだ。
なんだ、この気持ち。
面映ゆくなんかない、そんなわけない。
アリィがまともだと、なんだか調子が狂う。
落ち着かないまま、私も山積みのプリントを減らしにかかったのだった。


