「どういうつもりなんだ!」
車に乗ったとたん、父は私をののしり始めた。
「最近ろくに話もしなくなって、口をきけば理屈ばかりこねて偉そうにして……
あげくの果てには親に恥をかかせて、足を引っぱって、何なんだ一体。
お前が何を考えているのか、俺にはさっぱり分からん!」
あまりにも声が大きかったので、私は肩を震わせた。
この人は、どうしてこんなに怒っているのだろう。
私は、そんなに悪いことをしたのだろうか。
恥をかかせて、だなんて、恥ずかしいことをしていたのはそちらのほうではないか。
心臓は早鐘のように打っているが、やはり頭は冷静に物事を判断している。
心と体がバラバラになってしまったのだろうか。
久しぶりに乗る父の車、初めて見るこんなに取り乱した父……
そして、いつも鼻につくはずの体臭に代わって漂ってくる香水の匂い。
おじさんがわざわざそんなものをつけて洒落こんで行かねばならないほどの仕事って、どんなものなんだ。
似合わない。
不愉快。
家の外では女々しく体臭を気にかけるくらい周りに気を配っているというのに、私にはこの扱いか。
納得できなかった。


