担架から診察室のベッドへ移されたとき、衝撃でかすかに意識が戻った。


医師にいろいろ質問されたが、詳細はもやがかかっているようで思い出せない。


「特に異常はないよ。強めの痛み止めを処方しておくから、目が覚めたら帰らせていい」と医者が看護師に言伝ているのを聞いた。


「こんな患者が救急車を使うから、本当の重症患者があぶれてしまうんだ。まったく迷惑な話だよ」という愚痴までも。


正論だ。


でも、それが患者の耳に届いてしまったので、残念ながらここは優秀な病院ではなくなってしまった。


重いまぶたをを閉じようとしたとき、看護師の優しい声がした。


「座薬を入れますよ」……




もう一度、頭を左に倒す。


やはりカーテンしかない。


ずっと見つめていると、布の織り目が浮き上がってきた。


規則正しく、均等な幅で糸が織りこまれている。


一本一本はとても細いのに、それがたくさん絡み合って大きな布を作り上げている。


その糸も、繊維が寄り集まってできていて、その繊維もたくさんの目に見えない原子とか分子とかでできているのだ。


どうして私はこんなことを考えているのだろう。