救急車へ運ばれる途中、血圧が極端に低いが若い女子にはよくあることだ、という救急隊員の会話を聞いた。


どこが痛いか、と聞かれて「お腹」と答えた。


なにか変ったことはなかったか、と聞かれて反射的に「ない」と言ってしまった。


すると、彼らが私の服に手をかけ始めたので、もうろうとしながらも焦った。


不都合の原因をつきとめるための当然の行為だが、他人にこの貧相な裸をさらすのは私にとってこの上ない苦痛だ。


嫌がろうとしたが、力が出ない。


私は、か細い声で「嫌だ」と言ったが、隊員たちの耳には聞こえなかったようだ。


腹のあたりを探られる感覚がたまらない。


痛みと疲れ、そして羞恥心で視界が途切れた。


そこから病院までのことは、覚えていない。……




同じ態勢に疲れたので、今度は頭を右に倒した。


腕に目をやると、採血されたらしく、小さな正方形のテープが貼ってある。


少し血がにじんで黒ずんでいて、それはなぜだか睡魔を誘った。……