夢のふちに片足までひたしたところで、急激に現実へと引き戻された。


あまりのことに目を見開いて唖然としていたら、下腹部に激痛が走って、ああ目が覚めた原因はこれか、と理解した。


状況を把握できるくらいに頭は冷静なのだけれど、どうにもこうにも体は言うことを聞かない。


断続的に襲う痛みに、喉からはうぅ、うぅ、と声が漏れ、暑さのせいではない汗が額を伝う。


体験したことのない、並々ならぬ痛みだ。


そのうち下してしまいそうな気になってトイレに駆けこんだものの、どんなに力んでも何も起こらず、

ただ内臓が凝固したり沸騰したりを繰り返し、それはいくら経っても治まる気配がない。


私はあまりの痛みにのた打ち回り、意図せず胃の中のものを全部吐き出してしまった。


苦しい、苦しい。


便器の脇に伏せってぜいぜいと息をしていると、あの憂鬱の種が芽吹いた。


本当に、母と同じ病気になってしまったのかもしれない。




……私は、死ぬのだろうか?




暗い部屋に、一人きり。


痛みが支配する感覚の隙間を縫うように忍び寄る足音を、私は聞いた。


その足音は、私の神経や毛細血管、ついには大動脈までをも切りたがる意思を持っていた。