その書き置きに気がついたのは、帰宅して、いつもののり弁をテーブルに置いた直後のことだった。
『今夜は仕事で遅くなるから、晩飯はいらない。一人で好きなものを食べなさい』
その綺麗とも汚いとも言い難い大人の字は、間違いなく父のもので。
なんてこと!
私はテーブルの横に崩れ落ちた。
どうして昨日のうちに言っておいてくれなかったんだ。
今日の父の弁当を買わないでよかったのなら、そのお金でナプキンを買ったのに。
コンビニ弁当の消費期限は、そう長くない。
今日買った分を明日に回すことはできない。
私が、食べるしかない。
丁度よかったじゃない、最近まともなもの食べてなかったんだから。
そう自分に言い聞かせて、弁当を温めた。
久しぶりに食べたご飯粒は、ぽろぽろとまとまりがないのに、何よりもおいしかった。
食べている、という実感が嬉しくて、今日は父のことを気にする必要もないし、もうこのまま気分よく寝てしまおう。
ほくほくとした気持ちでベッドに入って、目を閉じた。
異変が起きたのは、その数十分後のこと。


