「お前、これ……」
帰ってきた父は、テーブルの上にぽつんと鎮座するカップラーメンに案の定、絶句した。
「のり弁、売り切れてたから……」
苦しい言い訳だ。
それなら。
「それなら別の弁当を買ってくればよかっただろうに」
そう、そうなる。
何も言えやしない。
「ああ、もう、お前はどうしてこうなんだ」
父は腹立たしげにやかんに火をかけだした。
言わなければならない。
お金をちょうだい。
それだけでいいんだ。
「おい、ぼうっとしてないで箸くらい用意したらどうだ」
言いたくない。
でも負けてはいけない。
きっと父は私を責める。
それがどうした、生きていくためだ、私は何も悪くない。
さあ、言うんだ。
「お父さん」


