父が起きてきたのは、私が朝食を作り終えてすぐだった。
テーブルに並ぶのは、トーストにスクランブルエッグ、しかしそれだけではあんまりだと思って作ったサラダ。
「なんだ、またパンに卵か」
父は、それを見るなり「おはよう」も言わずに不満をもらした。
惰性に打ち勝ってサラダを作った、その労力に感謝のひとつもできないのか。
嫌なら食べなければいいんだ。
私はふて腐れ、何も言わずにコーンスープの素が入ったマグカップにお湯を注ぐ。
「父さんは、朝は味噌汁がいいんだよなあ」
よれよれのスウェットをだぶつかせて脇腹をかきながら、父が勢いよくテーブルにつく。
その拍子に生まれた空気の流れに乗り、中年男性特有の体臭が迫ってきそうで私は息を止めた。
あれは我慢ならない。
思い出すだけで吐き気がしてきて、ただでさえない食欲がいっそう萎える。
いつからだろう、父が、なぜだかわずらわしい。
父がそこにいるだけで気分が悪いし、ただの何気ない言葉にすらいちいち腹が立つ。
私は今、『反抗期』というやつなのだろう。
大人になりつつあるのだ。
そういう『成長』というものが、非常に恥ずかしい。
そうやって恥ずかしがるのも『思春期』というものに足を踏み入れだしたせいだと思うと、もっと恥ずかしい。
そして、なんとか恥ずかしさを隠そうとすると、無意味にとがってしまって引くに引けなくなり、またどんどんとがっていく。
二人きりの家族だし、養ってもらっている感謝もある。
本当はうまくやりたいのだけれど、できない。
原因は分かっていても、相手が生理現象では勝ち目がない。