「どうしてって……」


「それは……」




「あのさ、後藤さんって有田さんと仲いいじゃない?」




みんなが口ごもっている中で、一人が吹っ切れたように、そう言った。


さっきもこの話題を切り出してきた、あの子だ。


彼女だけ、他の子と空気が変わっていた。




「有田さんって、後藤さんのことすごく好きみたいで。

朝、後藤さんがなかなか来ないから、いつもすごく寂しそうにしてるんだよ。

それで、有田さんは後藤さんが来るまでいろんな子に話しかけてるの。

私達は別にいいんだけど、中にはちょっと迷惑だなって思う子もいるみたいなのね。

ほら、朝の時間って大切じゃない?

だから、そういう子の気持ちも分かるんだよね、私達は別にいいんだけど」




口調は優しいまま、でも言葉以上にその瞳が物語っていた。


つまり、こういうことだ。


アリィは今でも、私が学校に来るまで、私と『親友』になる前と同じように、『イケニエごっこ』をしていた。


それが迷惑だから、私に早く学校に来い、と。


そして彼女達の平穏のために、アリィの面倒をずっと見てろ、と。


しかも「私達は別にいいんだけど」という心にもない偽善までまとって。


まるで私がすべて悪いとでもいうように。


彼女達はその私の悪行をそっと優しく忠告してあげたこのクラスの良心であるとでもいうように。