何も言えないまま、何も理解してくれないだろう父と暮らす家へ、私は帰らなければならない。
鉛のようなため息を吐いて席を立とうとしたとき、ふと気配を感じて振り向けば、そこには四人の女子がいた。
なんとなく私の近くでおしゃべりをしているのではない。
全員が私を見て、私と相対するためにそこにいる。
それは、他でもない私の苗字が彼女たちの口から発せられたことで確実となった。
「後藤さん、ちょっとお話させてもらっていい?」
私に、アリィ以外の誰かが話しかけてきた。
これはとても珍しいことだ。
このとき私の胸にわいてきたのは、間違いなく歓喜だった。
誰もいないわけじゃない。
友達と呼べるような親しい関係でなくても、同じ空間で日々を過ごしているというつながりがあれば、
こうやって会話をすることがあっても自然だろう。
実際に、彼女たちは私に何か話したいことがあって、声をかけてくれたのだから。
アリィに囲われているおかげで、こんな当たり前のことすら忘れていた。
私がアリィ以外の子と話してはいけないなど、誰が決めたというのだ。
それに加えて、なんて素敵なタイミング。
このつらい痛みを、彼女たちに打ち明けてみよう。
「いいよ、私もちょっと聞いてほしいことがあるし」


