呆けていた父の顔が、みるみるゆがんでいく。 「由紀子……!」 驚いているのか、笑っているのか、泣いているのか、分からないくらいぐちゃぐちゃの顔をして。 「分かった、買ってきてやる!一等、でっかくて、甘いやつ! 今すぐ買ってくるからな!」 そう言って病室を飛び出していった。 バタバタと騒々しい足音が、遠ざかっていく。 また、ひとりになった。