何度も読み返した。
何度も、何度も、何度も。
だって途中で視界がかすんで文字が見えなくなるもんだから、ちゃんと読むにはそうするしかなかった。
無言で泣いた。
頬に伝う暇がないくらい大粒の涙がぼたぼた落ちて、手紙を濡らさないようにするのが大変だったほどに。
そして私は最後の『有田 淑子』の文字をなでた。
あんなに――たぶんダサいという理由で――本名を嫌がっていたアリィが自ら書いたそれは、アリィの誠実な想いの象徴だった。
一生懸命書いてくれたんだろう。
たくさんたくさん時間をかけて。
そんなに自分をバカだバカだって。
分かってたなら、もうちょっとそういう素振りを見せなさいよ。
全然気づかなかったじゃないか。
アンタがこんなにもちゃんと物事を考えられるって。
私の方が、バカだったんだって。
今、気づいた。


