彼女は表情を硬くし、押し黙ってしまった。


いけない、怒鳴ってしまった。


でも納得がいかない。


これじゃあ計画が台無しだし、アリィを取り戻せない。


私があせるのは当然だ。


「どうしてですか」


感情の激流を必死に押さえこんで再び問うと、先生は硬い表情のまま、静かに言った。




「おしゃれが、したかったの?」




難しい質問だった。


オシャレにまったく興味がなかったといえば嘘だし、着飾っている過程はとても楽しかった。


それそのものを楽しんでしまったという結果からしてみれば、答えはイエスでも間違ってはいないのかもしれない。


でも、目的は『ギャル』になることであり、これはアリィを奪還するための作戦であることは揺るぎない。


ただ単にオシャレがしたかったわけではない、ここはノーと答えるほうが圧倒的に正しい。


しかし、この作戦をこの無関係な大人に話して何になるのか。


この大人がアリィを取り戻してくれるとでもいうのか。


そんなの、考えるまでもない。


結局黙ったままでいると、先生はまっすぐに私を見すえて「こちらへ来なさい」と言った。


その目にもう動揺は見当たらず、むしろ私と向き合おうとする決心のようなものが見て取れたので、私はそれに従うことにした。


「さあ、この姿見で自分のことをよくごらんなさい」